東洋の蔵府【9】 五臓の竅(あな)その一

東洋の蔵府【9】 五臓の竅(あな)その一

人間の五臓はそれぞれに精神を宿し、身体の奥深くにあります。その五臓が外界に開く竅(あな)というものがあります。
人間の竅は全部で九つ、目、耳、鼻、口、二陰(尿道と肛門)となります。
まず目には肝がつながります。肝が血を集めて、目に送ることで目ははっきりと物を見る事ができるわけです。
故に血が少なくなると目が悪くなります。古人は「肝が正常であれば五色を弁別できる」と述べています。
目を開くには肝気の力がとても重要です。肝気が高ぶると怒りという感情が起こりますが、その時肝の竅である目は大きく開きます。
耳は腎の竅です。音は振動で伝わるもので、水面の上で音叉を叩くとそれが水面に伝わり振動するという実験があります。
腎は水の蔵ですから、腎蔵が弱り水が減ってくるとうまく振動を感じ取ることができなくなります。高齢で耳が遠くなるのは、ほとんどがこの原理で起こります。
そして匂いを感じ取る鼻は肺が竅を開きます。
前回の話の中で肺が外気と触れる部分だと説明しました。外気に触れながら皮膚を温めています。外気に触れる鼻の部分もそうです。
肺気が弱っていると冷気をもろに受けますので、その竅から鼻水が出やすくなります。風寒の邪気を受けて鼻水が出ている状態はこれにあたります。
次に口は脾の竅です。飮食の不摂生などで胃腸に熱がこもることがありますが、そのときは口腔内に出来物ができやすくなります。口内炎などです。
また脾を疲れさせて脾蔵の精を奪ってしまうと潤いがなくなり唇が乾きやすくなります。

今回はここまでで、次回は口の中にある舌(ここは心の竅)と二陰(腎の竅)について説明していきたいと思います。