京野菜の気味【2】 秋冬(かぶら)

 

暑い夏もようやく終わり、なんとか秋になってくれましたが、秋には秋の気候の変化があり、それにあった野菜が店先に並ぶようになります。
10月後半から旬をむかえるのは聖護院かぶらです。千枚漬けの原料になるので、京都以外の方にも馴染みの深い野菜です。 聖護院かぶらの起源は滋賀県にあるようで、江戸後期になって聖護院辺りの農家の人が種子を譲り受けて育てたのが始まりといわれます。
かぶの種類の中では最も大型で、味は甘みが多いと言われます。千枚漬けを始め、京料理にもよく使用されます。このかぶらの気味は、「甘辛温」とあります。温ということは身体を温める作用があるということです。甘みは脾蔵、辛味は肺蔵を養う味でもあります。聖護院だいこんというのもあるようですが、大根の気味も同様に「甘辛温」で旬もかぶらと同じです。
古書を紐解くとこの大根とかぶらには、「食を消し、気を下す」と、消化を助ける効果があると言います。この作用は甘味と辛味がもたらすものなのです。甘みの作用は緩める、辛味の作用は散らすです。
消化機能が落ちている時、胃腸内では食物の流れが悪くなり、停滞を起こします。その停滞に対し、脾蔵を助ける甘みと、停滞を散らす辛味が働いて、停滞を流れるようにしていきます。また、「温」の気を持つので、寒くなっていくこれからの時期には温めるという重要な役割も果たしてくれるのです。
これからの季節は傷寒という病に注意が必要です。傷寒とはインフルエンザを含む発熱を伴う感冒を指し、字のごとく寒気によって発症します。寒気はまず皮膚をおそいます。このような時にも、辛味で温めるかぶらの力が役に立つのです。というのは、皮膚に停滞した寒気をその辛味が散らしてくれるからなのです。