温泉再考【4】 温泉の個性

 

今回は、温泉の個性を決める温泉の才能(泉才)についてお話します。
その前に、温泉の湧き方を思い出してみてください。「温泉は、地中に鬱積した陽の火が、水脈と交わり湧き出てきている」ものでした。
その過程で温泉に溶け出してきたものの違いでそれぞれの泉才が決定されます。
今でこそ化学的方法で溶出している成分がわかりますが、古人は泉才を見分けるのに、味・色・臭を参考にしていたようです。
また、湯の底にへばりつく結晶なども参考にしていたと思われます。
例をあげると、鉄、硫黄、明礬、石膏、鹹などなど数えればまだまだあると思いますがそれぞれが混ざり合ってその温泉特有の泉才をつくるわけです。
関西では、有馬温泉が含鉄塩泉、城崎温泉は塩化物泉、白浜温泉は炭酸水素塩泉、と関西の有名温泉でもこんなに違います。
また同じ温泉地でも源泉によって全く別のものにもなります。
温泉に入ると陽の気が通じて経脉をめぐり停滞していた古い血や痰などを巡らすというのは、すべての温泉が持つ共通の効能です。
そこに、泉才の違いにより違った効果が現れます。
有馬温泉に鉄分が含まれているのは有名です。
漢方の世界では鉄は肝と腎に働きかけると考えられており、オ血(古い血)を散らし、丹毒を取り除くとされています。
婦人科の病気は、そのオ血が原因となることが多いので、有馬温泉の泉質別効能には、慢性婦人病や月経不順などが含まれています。
その他にも酸味のある温泉は、皮膚に特に働きかけるなど特有の効果をもちます。
群馬の草津温泉はこの酸が強いことで有名です。
江戸期の医者たちは、このように泉才を分析することで、どの温泉がどのように身体に作用するのかを見極めていたようです。