東洋の蔵府【15】 五蔵と五労 その一
五蔵の虚(弱り)を生じさせてしまうことについては、以前紹介したことがあります。今日のサブタイトルである五労の労とは、エネルギーを激しく消耗させることを指します。
これから紹介する五つのことは、少しのことでは、エネルギーを消耗するに至りませんが、その動作が長く続くことで、五蔵を疲労させてしまうことに繋がります。特に仕事において、同じような体勢や作業を継続して行う場合が多いのですが、文字通り、労働というものが五蔵を疲労させることになるという話です。
先ず、肝蔵は「久しく行く」ことで疲労します。行くとはここでは、歩くという意味に捉えてください。長く歩いていると、筋力を使っていきます。この筋の運動を調節しているのが肝蔵になります。
肝蔵は筋肉をギュウっと縮めることで、身体を動かすための動作を起こします。長く歩いていると足が棒になると言いますが、肝蔵が疲れて筋肉を収縮させる力が弱まっていることを示しています。「歩く」ではないですが、筋肉トレーニング後に軽いものですら持てないという状態になることがあります。これも肝蔵の疲労の一つの形です。
そして次に心蔵は「久しく視る」ことで疲労するとあります。心蔵と目とは、心経という経絡で繋がっており、精神活動と目の状態が関連していることは、よく言われることでもあります。
視るという行為の度が過ぎれば、血を消耗します。血は心臓が常に動くために必要不可欠なものであるために、心蔵の疲労へとつながってしまうわけです。現代の仕事環境において、この「視る」ということはよく行います。心は精神活動とも関連する蔵ですので、できる限り心を疲労させないという意識は大事だと考えます。