京野菜の気味【3】 冬(ねぎ)

 

年中見かけるねぎは、薬味などにも重宝され、冬場は特に鍋物に入れられることが多くなります。そのねぎ、実は冬が旬となり、甘み、風味が一段と増します。京野菜の九条ねぎは、青ねぎの代表格で、古くは奈良時代の頃に浪速から移ってきたといいます。また長ねぎは、その九条ねぎが関東へ持ち込まれ、改良されたもので、栽培方法に違いがあるようです。
ねぎの気味は、「辛甘温」とあり、熟すれば甘味が増すとあります。また、「葱は肺薬、肺病の者、之を食らうに宜し」との記載があります。辛味は、肺を助ける役割をします。それは気の発散と関係があるからで、冷えなどで皮膚表面の気が停滞している場合など、それを発散させることができます。性質が温ですので、冷えに対する効果があるのです。
肺病というのは、咳や呼吸に関する病のことですが、この場合は肺気が弱ることにより、皮膚表面での防御力がなくなり、冷えてしまったことによる病気という限定がつきます。風邪で、咽喉が痛くなった時、ねぎを首に巻くという民間療法があります。これはねぎの気を通じさせ温める作用を利用したもので、漢方的にはとても理にかなった方法です。
一方、「表虚自汗には用いるなかれ」ともあります。表虚自汗とは、気の不足により、毛穴の開閉ができなくなり、何もしなくてもじわっと汗をかいている状態のことです。ここで気を発散させてしまえば、より気が不足してしまうので、「用いるなかれ」と注意を呼び掛けているのです。
もう一つ注意点として、「多く食すれば病を致す」と記載されています。薬味に使われるような食材は、多く食すれば身体を温めすぎたり、気を走らせすぎたりするため、基本的に多食は禁じられています。