東洋の蔵府【10】 五臓の竅(あな)その二
前回から引き続いて、五蔵が外界に開く竅(あな)についての話です。その竅は全部で九つあり、目、耳、鼻、口の解説を前回にしました。
残る竅は前陰と後陰(尿道と肛門)です。この二つには腎が深く関わります。
尿の調節に直接関わるのは膀胱です。膀胱は腎が正常に働くことにより生じる火の力を得て、尿を排出していきます。
もしその火の力が弱くなってしまったり、逆に強くなりすぎてしまうと、それが膀胱へと影響することが有ります。
火の力が強くなり、膀胱に停滞することになると尿が赤くなるといわれてます。ひどい時には血尿となるのです。
一方、腎気が弱く、膀胱も冷えてくると、頻尿となったり、遺尿(尿を調整できずもらす)といった症状がでてきます。
大便の調節に大きく関わる腸もまた、腎の火の力が重要です。
というのも、胃より小腸を経て送られてきた飲食物の糟(かす)は大腸において固形物と水分とに分けられます。
その際に、腎の火の力が十分に働くことができないと、その行程がうまく行かず下痢となることもあります。
これで九つの竅(あな)すべての解説が終わりましたが、一つだけ出てきていないのが心の蔵です。心の竅は舌です。
心は五蔵の中でも最も重要なもので、人間の智彗はこの心から発揮されます。
舌は言葉を発するのに重要な器官ですが、人間の言葉を発する過程にこの心の智彗は欠かせないものです。
この智彗が明らかでないと、言葉にはなるが何を言っているのかがわからない。または、ろれつがまわらず言葉にならないといったことになってしまいます。
というわけで、舌は心の開竅する場所であると言われているのです。
五蔵は身体の奥深くにあるものです。しかし五蔵の働きは表に現れそれを五蔵の状態の判断材料にすることができます。