古代中国において生まれた東洋医学には、様々な治療法が存在します。鍼、灸、漢方はもちろんのこと、導引、按摩の類も治療技術の内の一つです。それらの治療法は東西南北、そして中原(黄河流域)の五つの地域における特色ある地形、風土、生活習慣が生み出したのだと古人は述べています。
まず東方は上海などの海岸地域のことで、その地域では魚など海の食物を多く食べるので、塩が血を停滞させ諸々の腫れ物が起こりやすく、その腫れ物には今で言うメスの役割がある?石(へんせき)を用いるとあります。
西方の地域は山岳地帯が多く、空気が乾燥しています。そのため、皮膚の密が高く、外邪が容易に侵すことはできません。しかし、その住民は鳥や獣の肉を好んで食すので内より病が生じます。その治療には毒藥(漢方薬)を用います。
北方の地域は、内モンゴル辺りの環境で、寒気が強い地域であり、その住民たちは寒に侵され易い。その寒を散らし陽気を助けるために、この地域においては灸が生みだされました。
次に南方の広東などの陽気が盛んな地域においては、地勢が低く、湿気が多く集ります。その湿気が経絡に停滞することで痛みとなる病がこの地域では多く生じ、治療には鍼を用いて経絡の気を通行させて痛みを取り除きます。
最後に中原の地域。中央は他の四地域のような極端な地勢ではないために、物があつまり様々な食物が手に入ります。労せずして食べることのできる地域でありました。そのため、身体がなまってくることが多かったのです。
そんな時、体内において気のめぐりが悪くなり、邪が停滞します。その停滞を取り除くために、按摩、導引の治療が生み出されたといいます。
これらの方法を適宜用いることが、様々な病を治すために必要であるということを、古人は示しているのです。