温泉再考【6】 浴法を守る

 

これまでお話してきたとおり、温泉の力は人の頑固な邪気や古い血を動かすくらいのものですから、当然間違った方へ働けば、身体の毒ともなります。そして、温泉の効能を最大限に引き出すためには、浴法を守らなければなりません。
まず温泉に入るには、身体を慣らすことから始めます。これはよく言われるかけ湯のことです。手足から徐々に体幹部へ移ります。そして、足先からつかっていきます。
この時の心情は心を平らかに、気を和ませて。ですから、温泉に入る前にはけんかはなさらないようにご注意を。
しばらく湯船につかり、温泉の陽の気が身体中に浸透してくるのを待って外へ出ます。そして呼吸を調え、心拍が収まるのを待ちます。
この状態を古人は「悠然として、気を吹き、煩を解し、心胸をやわらげる」と表現しています。
これを一度の入浴で二回から三回を基準にして繰り返し、湯あたりしやすければ一回で止めます。
また一日に入る回数も三回を基準にして、調整します。そのようにして温泉に入ること三日ほどで効果が出てきます。
胸が和らぎ、お腹がよく空いて、食べる量が増えて、味がおいしくなってくると、その温泉がその人に適していると判断できます。
しかし、もし胸が塞がる感じで、お腹が張って食べても味がない、頭痛やめまいがするときなどは、その温泉が適していないことがあるので、一度休んでから以前より軽めに入ってみます。
それでも変わらなければ、思いきって湯治を中止しなければなりません。
温泉が身体に適しているかどうかの判断はとても重要なので、湯治をするにあたっては、このように身体の状態を詳細に観察し、正しい入り方で入ることが大切なのです。
湯治でなく一泊の旅行でも注意すべきことがありますので、それを次回にお話します。