温泉再考【1】 温泉の湧き方

 

この「温泉再考」では、東洋医学の立場から、どのように温泉をとらえるのかということをお話ししていきます。
なかなか治効があがらない患者さんを、湯治に行かせたという江戸期の漢方家もいるくらいですので、やはり温泉には、相当な力があるようです。
昨今は、温泉の話はそこそこに、料理や景色といった風情が強く印象に残ったりします。
「温泉を語るのに風情は欠かせません」とおっしゃる方も居られるでしょうが、ここは一つ、湯治のための温泉という観点から読み進んでみてください。第一回は、温泉がどのように湧くのかというお話です。
この世界には、毎日太陽日輪の光が降りそそぎ、その大いなる天の陽気によって、万物が育ち、活動することが出来ています。
その暖かい陽気が地中に浸透していき、積もり積もってどんどん伏欝していきます。
そして、ものすごい熱量が集まっていきます。
これを地中の火と呼びます。特に高い山の下であれば、その集まった地中の火が、外へ発することが出来ずさらに、沸欝としてきます。
例えるなら、蒸気のもれない圧力鍋のようなものです。
その圧縮された地中の火の力が、限界点を突破し、大地を突き破って裂け目から飛び出してくる、これを古人は、火井(火の井戸)と呼びました。つまり火山のことです。
そして一方で、地中の火が地中の水と交わり、水が温められて、地上に湧き出てきたものが、温泉となります。
火山が多いといわれる日本に、温泉も多いというのは、そういうことなんですね。
東洋医学ではこのように温泉というものをとらえています。
つまるところは、火と水(陰と陽)の作用によるものなのですが、そこに様々な条件が関わり土地それぞれの温泉となります。