東洋医学密語集 その一 虚と実/内傷と外感

そもそも東洋医学は、陰と陽の太極から成り立つ世界観であります。あらゆる事象をどこまでも陰と陽とに細分化でき、限りがありません。これから説明させていただく用語に関しても、単純に割り切れない多くの意味を内包しており、それを用いる状況によって意味合いが変化するため、すべてをお伝えすることは出来ませんが、皆さんが治療をお受けになる上で役立つのではと思います。

<虚と実について>
それぞれの漢字の意味を調べてみると、虚は「うつろ、中身が空っぽな様子」を、実は「満ちる、ものが詰まった様子」を表しています。そして、身体活動に必要な気を正気と呼び、虚とはその正気の虚を意味します。反対に、実とは邪気実を意味します。正気の不足や弱ったところに生じて、正常な気血の流通を妨げます。
たとえば、風船をひとつ想像してください。余分な空気は邪気となって風船を破り、空気が足りないと風船はしぼんで用を成しません。また、後述する外邪も邪気であり、正気の不足したところに侵入します。

<内傷病と外感病について>
内傷病とは七情(怒・喜・思・憂・悲・恐・驚)の乱れ、つまり感情の変化が、外感病とは外邪(風・寒・暑・湿・燥・熱)、外界の大気の性質が人体に与える影響を指します。その他、飲食や労倦(労働または動かなさすぎる)、房事過度(性生活)など自分自身の行為によって体内で起こる変調もあります。
外邪の中でも、風邪は百病の長と呼ばれ、他の外邪を連れてしょっちゅう体内に入り込んでは、様々な病の原因となります.。寒邪や熱邪とともにカゼ症候群になり、また、寒邪、湿邪とともに肌肉に入り込むと痺病といい、神経痛やしびれ症状を引き起こします。つまり、正気の虚があるところに同じ邪が入り、表面上は違った症状を呈しているのです。