東洋の蔵府【13】 蔵府の虚(弱り)にも陰陽がある
五蔵に虚(弱り)が生じることで、病が生じるということをこの二回で説明してきました。この五蔵の虚には、大まかに二つあります。それは陰虚と陽虚です。
虚とは“うつろな”というような意味なので不足していると捉えてもらってかまいません。つまり陰の不足と陽の不足があるということです。
東洋医学の病理原則の中に陰陽の不足について「陽虚するときは外寒し、陰虚するときは内熱す」というのがあります。この内外の字は身体の内外を指しています。内側にある五蔵に対し、外側は六府や経絡になり、陰陽の虚は、それらに影響を及ぼします。
腎蔵を例に上げてみると、腎の陽の部分に不足が生じると、その外側である膀胱や、腎の経絡、膀胱の經絡が冷えてきます。膀胱が冷えてきて、水液の排出がうまくいかなくなると、肌表の部分に水液が溢れてきて浮腫を生じます。逆に膀胱において水液を貯留することができず頻尿となることもあります。
また腎や膀胱の経絡が流れている部分である腰や膝で気血の停滞が生じ、関節痛や腰痛を起こすこともあります。
一方、腎の陰の部分に不足が生じると、内部において熱が生じます。その熱が腎蔵の水液を渇かすことで起こる病に消渇というものがあります。消渇は口が渇いて水を欲しがるのが主症状になるのですが、現代で言う糖尿病にもこの症状があります。
またその熱が膀胱に波及し、尿中の水分を乾かし、結晶成分ができることがあります。これは腎や尿管にできる結石であり、尿の出が悪くなってしまったり、排尿痛が起きたりします。この病は東洋医学では淋病と名付けられています。
他の五蔵においても同様に熱や寒が生じて病を起こしていきますが、その各蔵の働きによって身体に現れる症状は変わってきます。