温泉再考【7】 浴禁について

温泉に入浴するにあたって、正しい方法で入浴しなければならないという話を前回させていただきました。
今回はこんな時は入浴をしてはいけないというお話です。これを古人は「浴禁」と言っています。
この浴禁には全部で二十五の禁があると古人は言ってますが、ここではそのいくつかをご紹介します。
まず一つ目は、「温泉に入るときは、極度の疲労状態で入ったり、満腹状態で入ったり、酒に酔っている状態で入るのを禁ずる」というもの。
浴法のお話の時に入浴時には心を平らかにして、気を和ませて入るというところがありました。
上記のような状態ではとてもそんな状態にはなりません。これでは温泉のいい効果どころか逆効果にもなります。
二つ目に紹介するのは「入浴後に、うたたねをしたり、お灸をすることを禁ず」です。
温泉に入るとその陽気の力によって全身の気血がめぐります。身体の表面では、毛穴が開いた状態になり汗がでてきます。
その時に気をつけなければならないのは、風の邪気です。毛穴が開いた状態ですと容易にその邪気の影響を受けてしまいます。
昨今は露天風呂の風情を好む方が多いようですが、この風の邪気には気をつけねばなりません。
うたたねを禁じるのも、寝ている間に湯冷めしてしまい、邪気を受けるのを防ぐためです。

お灸が禁じられているのは、温泉の陽気で身体が温まっているところにさらに熱を加えることで、その熱が体内に欝滞してしまうことがあるからです。
少し話がそれますが、湯あたりしやすい方に身体の表面の毛穴が開きにくいという方がいます。
夏でもあまり汗をかかないという方に多いのですが、その場合、温泉の力で温められた身体の熱を逃がすことが出来にくくなります。
そのために温泉の泉気が体内に欝滞してしまい、のぼせてしまうのです。これも熱気の欝滞による症状です。