東洋の蔵府【7】 脳と精神の関係

東洋の蔵府【7】 脳と精神の関係

これまでの話の中で、名前からイメージされる働きと違ったものがあったかと思いますが今日もその一つで「脳」についての話です。
脳と言えば、人間の身体の働きの中枢で、心や自律神経などを調整している部分というのがおおかたの理解かと思います。
東洋医学でその働きの中心を担っているのは、脳ではなく以前に紹介した「心の蔵」になります。
心(しん)は「神」の居宅と言われ、怒りや悲しみ、恐怖といった感情を統括するものであります。
それぞれの感情は他の五蔵より神の働きを受けて起こります。
そして今回のテーマである脳は精神のうちの「精」と関係が深いのです。というのも、脳は骨髓と関係が深いからです。
骨髓は身体の根幹をなす部分であり、精がしまいこんである腎によって温められ、その強度と滑らかな動きが維持されています。
脳はその髓の海であると、古典では述べられており、髓は骨と脳に貯蔵されていると考えられています。
腎蔵の働きが弱り、精気を充実させることが出来なくなってくると、骨髓の力も減ってきて、最終的には脳に集ってくる髓が減ってきます。
先ほど「神」が感情を統括すると言う話をしましたが、その働きを満足に行うには、「精」の働きがなくてはなりません。
精と神が交流することによって初めて人間の正常な働きがなされます。故に心(こころ)の働きを精神状態といったのです。
まとめると、西洋医学で考えられている脳の働きというのは、
東洋医学では「神」の居宅である心(しん)と「精」がしまいこんである腎の二つの蔵が主となりおこなっており、
脳はそのうちの腎に関係が深く、精気が充実することによって活力を得る髓を貯蔵している部分であるということになります。
脳の働きの低下による病は腎の病気として治療することが多いのですが、その腎と脳との関係を東洋医学ではこのように捉えているわけです。