京野菜の気味【4】 春(たけのこ)

 

2月4日は立春ということで、天地の気の変化は春へとめぐります。その気は大地から天へと上昇する方向性を持ちます。これは人間のみならず自然界の植物などもその気の影響を受けていきます。今回のたけのこは春の気の上昇をそのまま表わすような食物です。
京たけのこの発祥は1470年頃、道元禅師が持ち帰った孟宗竹の原種を西山(長岡京市)一帯に植えたのが始まりとされます。竹はイネ科なので野菜には入りませんが、京都産の品質が抜群に良いということで、伝統の京野菜ブランドの認定がされています。
たけのこの気味を古典から調べると、「味は甘、気は微寒」とあります。また、「消渇を治し、水道を利す。痰を消す」と述べられています。この消渇というのは、糖尿病などで見られる咽が渇いて、水分をとっても渇きが治まらないという症状を指します。これは腎蔵と脾蔵の弱りから生じる熱によるものです。
たけのこは、その熱を微寒の性質で冷まします。熱が冷めると腎蔵の負担が減り、尿が通じるというわけです。それにより、水の停滞から生じる痰の流動性も高まります。ただし、微寒の性質ゆえに、多食はしない方がよいとされます。
ところで、竹という植物はその成長スピードが速いことで知られます。これは最初に紹介したように春の上昇する気をそのまま受けているからなのですそのためたけのこを食べ過ぎると吹出物が出る場合があります。内側から上昇する気の働きが顔面に現れるのです。この作用を観察していた古人は、麻疹(はしか)の病において発疹がなかなか出ない状態の時に、たけのこの煮汁を飲ませたとの記載があります。発疹が出るのを助けることでより早い回復を図ったのです。