京野菜の気味【1】 夏(茄子)

 

漢方薬に使用する生薬には、「気味」と呼ばれるものがあります。これはその生薬の性質を示すもので、それが体内でどのような働きをするのかがわかります。
気味の気は寒、涼、平、温、熱とがあり、字の如く身体を温めたり、冷やしたりする作用を示します。
気味の味の方は、酸、苦、甘、辛、鹹があります。最後の鹹は塩の味を指します。これらの味は順番に肝、心、脾、肺、腎を補う作用を持っています。
生薬だけでなく、口にする飲食物にも同様に気味が存在します。食物ですから、薬ほど身体に作用することはありませんが、その気味を知っておくと、旬の食物の良さがわかってきます。
現在の季節は夏。五月頃からお盆にかけて旬を迎えるのは「茄子」です。京野菜には、賀茂茄子、山科茄子、もぎ茄子といった種類があります。
その内、賀茂茄子は北区上賀茂周辺で栽培され、大きな丸型の茄子で肉質が緻密でみずみずしいのが特徴です。料理としては油を吸い込みすぎないために揚げだしに向いています。また賀茂茄子の田楽は有名です。
茄子の気味は、「甘寒」と言われています。味は甘く身体を寒性にする性質があるということです。また、寒の性質により、邪熱を解することができるとあります。そのため、腫れや痛みを止めるために、肥えた茄子を煉って茄膏をつくり、患部にぬるという治療法がありました。
夏の暑い時節は、体内での熱産生が増します。体内の気の流れは外へ外へと散じていく時期です。茄子は寒性であることから、その熱を冷ますことができるのです。
夏の野菜には他にキュウリがあげられます。キュウリもその気味は「甘寒」と言われていて同様に熱を冷ます作用があります。