温泉再考【11】 名湯の才

 

温泉の才能、泉才(せんさい)を調べるのに<br>
古人は「其の才気、臭い、味、色を実際に入浴して調べることができなくても、その含有するところのものを検してこれを推測すればいいのである」と述べています。
今回は日本の名のある温泉の泉才を分析していきます。
「群馬の草津温泉」
草津温泉の泉質は含硫黄の酸性硫化水素泉です。酸性の度合いは日本でも随一と言われています。
硫黄は命門という腎に宿る火を暖める力を持っています。腎気が弱ることで火の力が衰えたときの病に有効です。
また酸性であることは、酸味の収斂する作用を持つということです。飲食物の酸味は肝藏に走るといわれており、その酸味の力で血を集めてくるのです。
温泉の場合は特に皮膚に接する部分においてその作用が期待できます。
皮膚に血が行き渡らなく、傷口が治りにくい病などに血を集めてきて治癒を早めることができます。
これは瘡と呼ばれ、現代の慢性皮膚病にもこのような病態があります。
「能登の和倉温泉」
和倉温泉は海中より湧く温泉で、浦から湧くということで湧浦(わくら)と呼ばれたようです。
泉質はナトリウム、カルシウムの含まれた食塩泉です。
塩味は腎に入ります。腎は身体の根幹で、骨を頑強にして動作の下支えとなります。
風寒の邪気が骨にまで侵入し、気血を凝り固まらせてしまうことがあります。変形性の関節痛などがそれにあたります。
塩にはものをやわらかくする作用がありますので、食塩泉は、凝り固まった気血をやわらかくし、骨の動きを助け痛みを和らげることができます。
日本の名湯はまだまだたくさんあります。名はそれほど知られていなくても、良質な温泉が多くあり、それぞれに泉才が備わっています。
その温泉の才を知り、自分だけの名湯を発見できれば、真の温泉通と言えるでしょう。