温泉再考【2】 温泉に入ると

 

前号では、温泉というものがどのように湧いてくるのかということを、東洋医学の視点ではどのように考えるのかについてお話いたしました。
今回は、温泉に入ると人間の身体にどのような変化が出るのかということについてお話したいと思います。
『温泉小言』という書物には、「温泉の功は、陽気をのびのびと通じさせて、気の留帯をみちびき、皮膚や肉を温めて関節を動きやすくする。
気血の流れがスムーズになるので、オ血(古くなって停滞し経絡の流れを阻害している血)をめぐらせ、諸々の邪毒を外に出す。
また湿気を除き、冷えをとる。」と述べられています。
温泉とは、天の陽気が積み重なって温められたものだと説明しましたが、その温泉の陽の気が身体の気を通じさせます。
気が通じるようになると停滞していた血や水などがめぐるようになります。
そこで『温泉小言』でのべてあるように、オ血や水、湿気の毒、寒気を取り除くことができるようになります。
少し具体的にいうと、寒気や湿気などで経絡の流れが阻害され痺れたり、筋肉が引きつったりするものや、ご婦人の経行不順などの婦人科疾患に有効であると述べられています。
浴法、浴度を守り正しく入浴した場合、その温泉が身体に合っているようであれば、胸の痞えがとれて快くなり、お腹がよく空くようになります。
ご飯の量が増えて味も美味しく感じるようになります。
また、病気によっては臭気の強い大便がでたり、長年のオ血が温泉の陽気によって動かされ下血することもあります。
この時はよくよく身体の状態を見極めなければなりませんが、良い方向の変化として起こることもあります。
天地自然の陰陽交和の気に入浴することで、人体内部の陰陽交流を正常化するというのが、東洋医学からの見方です。