東洋の蔵府【14】 五蔵と脉

東洋の蔵府【14】 五蔵と脉

人体の肝・心・脾・肺・腎の五蔵は、それぞれ異なる性質を持っています。その異なる性質は自然界の季節の変化とリンクしています。例えば、春は肝の季節。春は陽気が伸び、上昇していきます。その作用を人体内でやっているのが肝なのです。
季節が春になれば、肝の働きが旺盛になり、我々が診察する脉にも肝の旺盛な気の働きが現れるようになります。夏になれば心の脉、秋になれば肺の脉、冬になれば腎の脉といったように、季節ごとに脉が変化していくのが無病の人の脉です。
春の脉、つまり肝の脉は弦のような脉です。弦のようにやや弾力を持ち、伸びやかな気の流れが感じられる脉となります。
気温が徐々にあがり、夏になると心の脉が出てきます。心の脉は鉤(こう)脉といいますが、陽気の盛んな勢いが内側から湧きあがってきて、それが指にあたるところで散る感覚です。
秋になると肺の脉がでてきます。肺の脉は毛脉といいます。陰気が身体の表面を閉じるので、脉の表面が引き締まったような感じになるのが特徴です。
気温が下がり冬になると、滑脈という脉になります。滑脉は腎の脉で、珠が盤の上を転がるようにスムーズな流れの脉です。これは冬になり、凍えてしまわないように陽気を内部に温存してくことによってそのようになります。
ところで、脾の脉が出てきませんでした。脾の脉は、実はありません。というのも、脾は季節で言うと土用にあたります。土用は各季節のつなぎ目にあたる期間で、年に四回あります。季節の変化を生む時期なのです。
脾蔵は春夏秋冬の変化を生む土台部分にあたりますので、普段はその脉を現わすことはなく、これまでに紹介した各季節の脉の中にその働きが含まれます。ただし、脾蔵が病気をすると、その病気の状態が脉にでてくるので、すぐにわかります。